東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)77号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 当裁判所は、以下に説示するとおり、本願の考案と原出願の考案は、その考案の要旨を異にし、両者間に同一性を認めえないから、これと異なる認定をした本件審決は違法であり、取消しを免れないものと判断する。
1 前記当事者間に争いのない原出願の考案の要旨および原出願の考案の実用新案出願公告公報によると、原出願の考案は、動力刈取機に関する構造であり、稲麦の殻稈、藺草あるいは牧草類を飛散させることなく刈り取り集収することを目的とするものであるところ、この目的を達するため、(一)数枚の截断刃3、3を備えた旋回円鈑2を旋廻させる可動杆4と定着杆5の二杆を有し、これら両杆を刈取機本体1に取り付け、(二)この可動、定着二杆4、5にそれぞれの一端を枢着し、刈取機本体1を跨いで前方に突出する集草枠6を取り付けた構造を採用し、これにより、原動機7の部分を背負つて可動、定着二杆4、5を両手に把握し、本体1を地上に載置した後、原動機7を作動して、可動杆4を廻転し、その先端に在る旋廻円鈑2を旋廻し、これに固定する截断刃3、3をもつて稲麦の穀稈、下草類を集草枠6により一方向にのみ覆倒させて刈取作業を遂行するものであることを認めることができ、叙上認定の事実に徴すると、原出願の考案は、可動杆と定着杆の二杆を備えることと、この二杆に集草枠の一端をそれぞ枢着れさせる構造を必須の要件とし、集草枠そのものの構造については、「刈取機本体1を跨いで前方に突出する」構造とするに止まり、それ以上にその具体的構造を限定するものではないとみるのが相当である。
2 一方、前記当事者間に争いのない本願の考案の要旨および本願の昭和四三年一二月二九日付および昭和四四年一〇月一四日付手続補正書によると、本願の考案は、動力刈払機に関するものであるところ、その構造上の特徴は、後端に原動機(1)を装備した主杆(2)の前端に刈払機本体(3)を備え、外周に截断刃を形成した旋回板(5)を刈払機本体(3)の下方において運動回転できるように設けた動力刈払機において、集草枠の構成を、前端部が互いに接続されている上下に位置する二本の杆(a)、(b)からなる集草枠(6)を、旋回板(5)の上方にのぞませ、その前端を旋回板(5)の外周より前方に突出させた構造と具体的に限定した点にあること、そして、この集草枠の構造により、穀稈を刈り取つて寄せ集め、払い倒す場合に、少なくとも、上下の二個所の位置において穀稈を支持するので、刈り払う穀稈が刈り払う方向あるいはその反対の方向に倒れることがなく、穀稈を整然とそろえて寄せ集めた後、所定の位置へまとめて倒伏させることができ、また、上下二本の杆(a)、(b)の前端部は互いに接続し、しかも、旋回板(5)の外周より前方に突破しているから、穀稈の刈払作業に当たり、植立している穀稈群中へ集草枠(6)を急速に割り込ませ、突設せる集草枠(6)の前端部で刈り取るべき穀稈を枠(6)内に誘導して確実に刈り取りうる等の作用効果を挙げうることを認めるに十分である。
3 右認定の事実に基づき、原出願の考案と本願の考案とを対比するに、原出願の考案は、可動、定着の二杆を備え、これに集草枠の一端をそれぞれ枢着して取り付けた構造で、集草枠の構造については、刈取機本体を跨いで前方に突出する構成とした点を除き格別の限定がないのに対し、本願の考案においては、主杆2について、これを二本とするとの限定はなく、集草枠について前認定の具体的構造を採用した点において、両者は明らかにその構造を異にし、その構造の相違によりこれに伴なう作用効果をも異にするものと認めるべきである。
被告は、本願の考案の主杆(2)は、原出願の考案の可動杆4と定着杆5を意味するものであり、このことは本願の考案の明細書添附の図面において、原出願の考案の可動杆4および定着杆5と同一部分に符号(2)が付されていることから、明らかである旨主張するけれども、本願の考案の明細書添附の図面はもとより一実施を示したものにすぎないものというべく、前掲手続補正書の記載に徴しても、本願の考案において、主杆(2)を特に二本と限定する趣旨の記載は認められないから、右被告の主張は、採用するに由ない、なお、被告は、原告が審査過程において、図面を訂正し、一本の主杆を二本の主杆に改めた点からも本願の考案の主杆は二本である旨主張するが、前説示のとおり、本願の考案の明細書の記載に照らし、被告主張のように解することは到底できない。
次に、被告は、集草枠の構造について、「枠」の言葉の意味から、当然、原出願の考案の集草枠の構造はその明細書添附の図面に示された構造を意味するものであり、したがつて、本願の考案の集草枠の構造は、原出願の考案に内在する趣旨の主張をするけれども、原出願の考案が集草枠について示した技術的構成は前認定のとおりであり、本願の考案の集草枠の具体的構成およびこの構成に基づく作用効果が原出願の考案において期待しえない点を考え合わすと、単に「枠」の言葉の一般的な意味から両者同一の構造を意味するものとは、到底いいえないから、右被告の主張も採用の限りでない。なお、原出願の考案の明細書添附の図面には、本願の考案の明細書添附の図面と同一構造の集草枠が示されているが、原出願の考案の要旨に示された集草枠の構造が前認定のとおりであり、本願の考案のそれと異なる以上、叙上の事実があるからといつて、両考案の集草枠についての技術思想が同一であると認めることができないことは多言を要しないところであり、かえつて、この事実があればこそ、原出願から本願の考案を分割出願しうるものというべきであろう。
4 してみれば、本件審決は、原出願の考案と本願の考案とが考案の要旨を異にし、同一の考案でないにかかわらず、同一の考案であるとし、誤つた判断をしたものというべきである。
(むすび)
三、以上説示のとおりであるから、その主張の点に違法があるとして本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、その理由があるものということができる。
よつて、これを認容する。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)